ということで、現在執筆中の小説の序章部分を。
物語のさわり、文庫本で約4ページ分。
前振りや伏線配置のみですが、ここで「続きを読みたい」と思わせられるかが勝負になります。
本分は追記より。
以下、何箇所か本文のネタバレになりそうな部分があるので、一部を反転表示にしています。
作品タイトルは、
不思議の国のアリスからとった造語です。
現実にも似たような語で
不思議の国のアリス症候群というものがありますが、全くの別物ですね。
意味合いとしては「
夢と現実の区別がつかなくなる状態」など。今回の作中での重要なキーワードでもあるので、詳しくは本文参照ということで。
モチーフや記号として同作を引き合いに出してますが、内容よりも記号面での使用が主なので、そちらの内容は知らなくても問題ないかと思います。
「不思議の国のアリス」という作品について、今回の作中ではあまりそのストーリーライン自体は関係がありません。その本筋である、
・
アリスは迷子同然で見知らぬ世界に放り出され、冒険する。 ・
アリスが目を覚ましたとき、その不思議の国は崩壊する。 ・
アリスが経験したことは、実は全てアリスの見ている夢の話だった。という点を、一つの伏線として流用しています。
また、メインキャラクターを示す記号として、
・
アリス:夢の世界の迷子、夢の世界の創造主(=その目覚めは夢の世界の破壊)という語を用いています。他は『魔女』など、より単純な記号なのですが。
個性的なキャラが多く、記号化には都合がいいので、他にもいくつか拝借するかも。
念のため言っておきますが、あくまで「モチーフ」としての利用であり、作品内用の大筋ではありません。
盗作やパロの類ではないので。実際、こういった古典作品を流用するやり方はプロの方でも頻繁に使われている手法ですし。
あと、いろいろと実験的要素を埋め込んであるんですが、その辺は本分あとや次回以降のup時に。
というわけで、本文を。
アリス・シンドローム
序章-in the dream-
――夢。
そう。俺は今、夢の中にいる。
それを明確に告げる目の前の『魔女』の姿――正確には、後に『魔女』と呼ばれることになる少女の姿は、いつもと変わらず、この非現実の世界の中でも現実味はない。
いつもと同じ、人間とはどこか異質な存在感。
そこに確かに存在しているはずなのに、現実感が感じられない存在。いや、『魔女』に対して現実感なんて視点でものを言うこと自体が、間違いなんだろう。この『魔女』が、『現実』なんて一般的な枠から外れているということは、誰よりもこの俺が知っているはずだから。
そもそもなぜ俺は、これが夢だと知っているのか。
どうしてここに、あのころの『魔女』がいるのか。
たぶん、他の人たちは、夢だから、の一言で済ませるのだろう。夢だとわかって見る夢も、現実に反する夢も、珍しいものじゃない。そんなことは、俺だって知っている。知っているけれど……『魔女』が関わるとなると、話は別だ。
俺が夢の中で『魔女』と会ったとき、『魔女』は俺に予言めいた言葉を残していく。けれどその抽象的すぎる内容はそのときの俺には理解できなくて、いつも、いつも、全てが終わった後になって、『魔女』の予言の意味に気づくのだ。そのたびに、忠告されていたのに気づけなかった自分の頭に嫌気が差す。そして、夢で話したことを――つまり、俺の見た夢の中での出来事を――正確に反芻してみせる『魔女』に対する畏怖の念がより大きくなっていく。
それが、単なる渾名なんかじゃないことを、俺は知っている。
この女が、正真正銘の魔女だということを。
「ねぇ。どうしてわたしがこの姿であなたに会いに来たのか、わかる?」
記憶の片隅にある小学生のころの姿をした『魔女』が、静かに口を開く。現実には『魔女』も俺と同じ高校生だが、ここは夢の中。昔の姿になるくらいは、不思議じゃないんだろう。――いや、不思議じゃないのはあいつが『魔女』だから、だろうか。
「わたしがあなたに出会った頃の姿。わたしに『魔女』と呼ばれる切欠の変化が起きた頃の姿。その姿を選んであなたに会いに来た理由、わかる?」
『魔女』が繰り返して聞くが、俺は答えない。それは、ただ単に答えがわからなかったかじゃない。経験によって植えつけられた、『魔女』に対する純粋な恐怖。今も、俺を見つめるその瞳には、確かな狂気の色が浮かんでいた。
「あなたは長い時間、わたしという因子と関わって生きてきたでしょう。だからあなたもきっと、こっちに通じる真実を知ることになるわ。それが何時なのかは明確にはわからないけれど、あなたの様子から見ても彼らの動きから見ても、そう遠くないはずなの。だから少し、今のあなたに挨拶をしておこうと思ったのよ。わたしに変化が起きる前の、あなたと出会う前の姿で、ね」
俺は動くことも、言葉を口にすることもできないまま、無言で立ち尽くしている。それほどまでに、その目に宿る狂気は大きかった。
「わたしが真実を知ってどうなったのかは、わたしを除けばあなたが一番よく知っているでしょう?そしてあなたは今のわたしと近いものがある。だけど、全く同じじゃない。何よりもあなたは、変化の前の姿がわたしの影響を受けすぎているもの。さぁ、果たしてあなたは、どう変わるのかしら?とても楽しみだわ」
幼い少女の姿には、そして本来の高校生にすら、似合わないような不気味に大人びた声で言い、『魔女』は笑う。それは、心の底から楽しそうに。
「あなたがいつ、どんな形で核心に触れるかはわからないわ。でも、それを知るわたしとこれだけ関わったのだから、遠からず核心に触れることになる。これはもう、一つの既定事項よ。後は何か、引き金を待つだけね」
俺の経験上、『魔女』が予言したことは必ず当たる。いや、誰もが無意識に『魔女』の言葉に呑み込まれていると言ったほうが的確なのかもしれない。どちらにしたって、『魔女』の発言は俺の頭に残り続けて、俺に影響を与えるんだろう。『魔女』が言う何かが起きるまで。それが何のことなのかは、まったくわからないけれど。
「あなたの目覚めを楽しみにしているわ、アリス」
――俺の夢は、そこで途切れた。
まだ冒頭、作品の中心になる二人のキャラの顔出しと、伏線やミスリードの配置のみですね。
正直、こんな内容で続きを読みたいと思う人がいるのかは自信がないのですが(汗)。
気づいた方もいるかと思いますが、キャラクターの名前や外見に結びつく語はほとんど出していません。
これが今回の実験要素の一つで、不必要なキャラ描写を減らしてあります。
今回の作品ではキャラの内面が中心で、外見をあまり引き合いに出さないので、個人のディテールよりも「記号」の方がむいていると考えました。
たぶん、マキゾエホリックの委員長みたいな理屈です。
実際、古典で見ればイソップ童話などはわかりやすく虫や動物の擬人化で構成されていますし、グリム童話などでも最低限度の記号しか用いられていません。たとえば、「赤ずきん」の主人公は「赤い頭巾をかぶった女の子」である以上の描写は必要ない、というように。
現代の作品でも、いわゆる一般文芸とライトノベルを見比べてみればわかると思います。
キャラクターのディテールについて本来必要なのは、
・そのキャラクターのおおまかな呼び名など
・作品中で必要な特徴や経歴
・他のキャラクターと識別できる程度の個性
などくらいのもの。
ラノベでは一般に登場キャラが多いので書き分けるための個性を細かく描写する必要があり、イラストなどもつくので外見的特長も必要になる、ついでにヒロインの萌属性が半必須、というだけで。
今回はメインになるキャラ3人のみですし、過去や内面を描写するのに対して外見の描写の必要性がないので、思い切って記号のみにしてみた次第です。
他にもいくつか実験要素はあるんですが、その辺は今後の展開に絡むので、一応最後まで晒してからかな、と考えています。
まぁ、次を載せるかどうかは皆さんの反応しだいなんだけど。
自分でもなんとなく消化不良な感じはあるのですが、よろしければ感想や評価をお願いします。辛口で。